Digital Transformationとサンバとコーヒーと 〜Imperial MBAのGlobal Experience Week〜

2025年6月、Imperial Business SchoolのMBAプログラムの一環で、私はブラジル・サンパウロにて1週間にわたるGlobal Experience Week(GEW)に参加しました。これは、各自の関心に応じてテーマ別に訪問地が割り振られるもので、今年の行き先は以下の3つでした。
- ケニア・ナイロビ: 社会的不平等の解消と開発をイノベーションでどう進めるかを探る旅
- フィンランド・ヘルシンキ/デンマーク・コペンハーゲン: サステナビリティの先進地で環境・制度設計を学ぶ旅
- ブラジル・サンパウロ: テクノロジーとDX(デジタルトランスフォーメーション)がいかに企業や社会を変革しているかを体感する旅
私が選んだのは、ブラジル・サンパウロ。
理由はとてもシンプルで、「これまで一度も足を踏み入れたことがない、遠く離れた“もう一つの世界”を自分の目で見てみたい」と思ったからです。幼い頃、地球儀を見ながら「日本の反対側にある国=ブラジル」と教わったそのイメージが、ずっと記憶に残っていました。




滞在中には必ずサンバレッスンを受けるように強めに勧めたけど、果たして、うさこはサンバを踊ったのか…
AIと自動運転で“畑を読む”:最先端農業の現場から
今回のGEWでは、サンパウロ市内外の企業・団体を1週間かけて10社ほど訪問し、現地の経営者やテクノロジスト、戦略担当者と直接対話を行いました。
印象に残っている訪問の1つが、あるグローバル農業機械メーカーでのプレゼンテーションです。ここでは、AIを活用した自動運転トラクターや、農地に設置したスマートセンサーによるデータ分析により、土壌の水分・栄養状態をリアルタイムで把握し、精密な農業運営を実現している取り組みが紹介されました。
こうした技術には単に効率を高めるだけでなく、慢性的な人手不足への対応策としても非常に効果的に機能することが期待されます。ブラジルでは広大な農地に対して人材が不足しており、熟練労働者の高齢化も進んでいます(これについては日本も例に漏れませんが)。この企業訪問を通して、テクノロジーがその“隙間”を埋め、農業の持続可能性を支える構造が、想像以上に実践的に稼働している様子を知ることができました。


コーヒーの故郷で出会った、日本との意外なつながり
また、サンパウロ郊外のコーヒー農園「東山農園(Fazenda Tozan)」を訪問したのも忘れがたい体験でした。近代的な技術とは一線を画す、ブラジルの主産業の原風景がそこには広がっており、コーヒーの実が丁寧に摘み取られ、天日干しされる様子を目の当たりにしました。
実はここ、かつて日本からブラジルへと渡った移民が開いた歴史ある農園なのです。現地でガイドの方からその話を聞き、コーヒーの香りの奥に、日本から遠く離れたこの土地に根を下ろした人々の時間と物語を感じました。
ここでの経験は、単にブラジルの産業を知るだけでなく、日本とブラジルがいかに深くつながっているかを再認識する機会にもなりました。




ブラジルを肌で味わう
学びの合間には、文化交流の機会もたくさんありました。
特に印象的だったのは、サンバレッスンです。プロのダンサーの方に指導いただきながら、カーニバル衣装を身にまとい、陽気で力強いリズムに合わせて踊った3時間は、まさに“解放”のひとときでした。

ちゃんとサンバ体験したよ。普段使わない筋肉を使って疲労困憊だった。
また、ある夜には、各地域の料理と音楽が融合したレストランにて食事を楽しむ機会もありました。アマゾンの魚料理、バイーアのスパイス、リオの黒豆煮込み――どれも個性が強くて、まさに「味で知るブラジル」でした。
そこには「ひとつにまとまることよりも、多様性を受け入れる」この国らしさがありました。




ピラニア入りのスープを食べたけど、思った以上に淡白で美味しかったよ。言われなければ分からないくらい。
日伯友好130周年に寄せて:もう一つの“日本”
サンパウロ市内には、「ブラジル日本移民資料館」という施設があります。
滞在中に訪れたこの場所で、日本からブラジルへと渡った多くの人々が直面した困難と希望、そして今に続く日系人コミュニティの力強さを目の当たりにしました。
次の投稿では、日伯友好130周年を迎える今だからこそ、日本とブラジルの歴史的つながりと、現在のビジネス・文化の中でどのように日系の存在が活きているかを、自分なりの視点で掘り下げてみたいと思います。
